インドネシア違法伐採
・読売新聞 2006/7/24
インドネシア領カリマンタン(ボルネオ島)、カプアス川をボートで一昼夜、さらに川岸から延びたトロッコのレールの上を徒歩で一時間の場所に、違法伐採が行われている現場がある。8人の男と炊事係りの女が1人、丸太とヤシの葉でできた作業小屋にいた。建築材、家具材として使用されるテリハボクなどの直径40~50センチの中径木を中心に、手斧で1日100本近く切り倒していた。カリマンタン州内のアヘ族の村から出稼ぎにきたリーダー格の男は、「水田とゴムの木が村にはあるがそれだけでは生きていけない。危険な仕事ではあるが家族のためにもう5年も続けている」と語る。また、現地責任者と名乗る男は、「伐採許可書はここにはなく、私は頼まれて材木を運んでいるだけ」と話す。伐採された丸太はトロッコで川岸まで運ばれ、船で州都ポンティアナクの木材市場まで運ばれる。西カリマンタン州の自然保護局が捜査を行っているが、背後に大きな組織が動き、有力者が絡んでいる場合もあるので、摘発は一筋縄では行かないようだ。日本で使用される木材の約8割は輸入材で、その4分の1が熱帯材だ。年間約2600万立方メートル(2004年)をインドネシアから輸入しており、日本の熱帯材総輸入量の4割近くに達し、5割を占めるマレーシアと並ぶ有力な供給源である。1998年に英、インドネシア両政府が行った合同調査によると、インドネシア国内の製材工場に運び込まれる木材のうち、合法的に伐採された木材は半数に過ぎない。違法伐採は、伐採権を乱発したスハルト政権が1998年に崩壊後も深刻化し、貧しい農民が加わり、犯罪組織が入り込んで、潜行した形で広がっている。一昨年、ボルネオ島最奥部のベトゥン・カリフン国立公園で、森林警備隊と軍、警察が合同で大規模な違法伐採グループを摘発した。現場責任者3人を逮捕、日本製の四輪駆動車6台、ブルドーザー7台、丸太約2900本を押収した。マレーシアに本社がある企業の関与がわかっているが、未だ摘発にはいたっていない。世界自然保護基金によるとカリマンタンの森林率は、80年代半ばは75%であったのに、現在は50%まで激減している。世界銀行は破壊が今のペースで進むと2010年までに森林の大半が消滅すると警告している。