世界遺産候補地「小笠原」
・読売新聞 2006/7/23
世界自然遺産候補地の小笠原諸島・父島では、新空港建設の話が持ち上がっている。これまでに、空港建設計画が2度にわたり頓挫し、昨年11月には高速客船テクノスーパーライナーの就航断念と、東京都と小笠原村は村民の期待を裏切り続けてきた。実際急病人の救急搬送体制に不安をもらす村民もいるだけに、地元自治体としては、空路設置構想は譲れない一線である。森林生態系保護地域の設定に関しては、コア・ゾーン(保存地区)になる国有林への立ち入りは村民であっても原則禁止されるが、その中の海岸や歩道では村が事前に定めた自主ルールでの活動が認められる。また常設の「保全管理機構」を保護地域の設定後に設置し、場所ごとの利用ルールを作っていく。さらに新空港建設の候補地に挙がっている父島・州崎地区を、構想が実現した場合としない場合両方を想定し、バッファー・ゾーン(保全利用地区)にした。林野庁がこれらの内容を住民説明会で説明したところ、反対したのは一人だけで他の住民からは質問はあったものの説明の内容に納得して帰っていった。反対したのは村の幹部職員だった。州崎地区をバッファーから外し、父島の集落間を結ぶ防災道路建設候補地をコアから外すよう主張した。林野庁は今月に予定していた保護地域確定のための最終会合を村の意向などに配慮し、来月下旬以降に延期した。ただ空港建設については、森林伐採と土砂流出を伴い、世界遺産登録の壁になるのではないかと複数の住民が語り、海上に舞い降りる飛行艇の導入や、硫黄島にある米軍基地滑走路の利用など、他の旅客輸送手段への期待をしている。