全国に命の花を
・毎日新聞 2006/7/9
鳥取県倉吉市で平和・人権問題に取り組む市民団体「鳥取ピース・クロス」の世話人代表、池原正雄さんは、1990年被爆アオギリの語り部、沼田鈴子さんから広島平和記念公園の被爆アオギリの種を託された。しかし栄養を蓄えた土に植え水を与えたが、一つも発芽しなかった。そこで、カッターで種の殻を削り、水を含ませたティッシュの上で半年ほど育て、白い菌糸のような根が伸びてきたら、土に埋め発芽させるという、独自の発芽技術を地元の農業高校の男性教諭と協力し考え出した。発芽率は50パーセントに及び、この独自の発芽技術で育てた苗は、昨年までの14年間で300株近くになる。この苗は全国の希望者に配られており、神戸の公共施設は、震災復興のシンボルとして、重度の障害を抱えた子供の両親は、中学に進学した我が子の記念樹に、養蜂業の経営者は、環境破壊を引き起こす戦争への反対の意思を示すためなど、様々な思いで育てられている。最初に発芽したアオギリは2004年に初めて花をつけ、翌年には3世が誕生した。今年の春には約60株が芽吹き、夏が過ぎるころに全国の希望者に配られる予定である。