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新聞からの木の豆情報

古代の自然「渓畔林」

・読売新聞  2006/6/25
西中国山地の渓谷(広島県・細見谷)に「渓畔林」という希少動植物の宝庫がある。ブナやトチが生い茂り、サワグルミの巨木が日差しを遮って、ひんやりとした外気に満ちた太古の自然が残る場所です。原始の森は生命をはぐくみます。絶滅危機にあるツキノワグマが自然繁殖し、希少猛きん類のクマタカも営巣をします。渓流には特別天然記念物のオオサンショウウオも生息しています。2003年に日本生態学会が「けた外れに種の多様性に富む、西南日本では他に例を見ない存在。国レベルで第1級の保全対象とされるべき」と国や県に保全を求めたのもうなずけます。今、この渓谷が開発と保護の狭間にあります。1969年に制定された全国32路線、総延長200キロにも及ぶ大規模林道の整備構想に組み込まれています。細見谷は木材搬出用としての目的でしたが、すでに細見谷いったいでは木材生産をしていません。それでも「緑資源幹線林道」、目的を「森林整備やレクリエーション用」と変更し、独立行政法人「緑資源機構」(旧森林開発公団)が細見谷を縦断する路線の建設に動いています。機構側は「自然に配慮する」と渓畔林を通る区間の道幅を規格の7メートルから3メートルに狭め、場所によってはアスファルト舗装でなく砂利道にするとし、早期着工を目指していますが、大規模林道に緊急性があるとも思えないのに工事を急ぐのでしょうか。この間の検討過程からも問題が浮かび上がりました。機構が設置した第三者組織、環境保全調査検討委員会は昨年末着工容認の意見を提出しました。機構による動植物の生息調査にも基づき建設の環境影響を評価した結果ですが、その調査の不備が一部委員から指摘されていたのです。実際機構がまとめた報告書では希少動植物が「未確認」とされていたにもかかわらず、環境団体の独自の調査では次々と発見されたのです。植物のラン科を中心に14種類見つかり、その数はさらに増える見通しです。不信感をぬぐえない原戸さんらは林道建設の是非を問う住民投票に向け、直接請求の署名集めをしています。一方林野庁は事業の必要性を再評価する評価委員会で現計画による着工を認めるかどうかの結論を出す考えで、委員会のメンバーが今月末現地調査に入ることとなりました。大規模林道建設は計画されると止まらないと指摘される公共事業の一つです。かけがえのない自然を守るために一人一人が考えなければなりません。

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