木目を生かす彫刻
・毎日新聞 2006/6/22
欄間とは、和室の鴨居の上に明かり取りや換気と装飾を兼ねて取り付けられるもの。板に模様をくりぬいた「透かし彫り」や、細かく削った板を組み合わせた「組子」などあるが欄間の中で最も難しいのが「彫刻欄間」で、屋久杉などの木目の美しい材料に手間暇かけて風景や動植物を彫る。着色はせず、木地を生かすため松葉の一本、羽根の一枚まで丁寧に筋をいれる。欄間職人高橋達也さん(松原市、高橋工務店)の工房にはノミの音が響く。「欄間を彫るには絵心が必要。下絵はあくまで基礎で木目に合わせてその場で図柄を変えていき、いかに立体感を出し、品格を追求するかです。日光東照宮の彫刻は立派だが、彩色でいくらでもごまかせる。僕らは筋の一本一本まで自分の手で直濃くしていくから大変なんです」と職人の自信をもって話す。和室が少なくなった現在、本格的な欄間の注文は少なく、組合では欄間の技術を生かした衝立や照明器具、飾り額などを開発し共同受注を進めている。高橋さんが製作中の欄間は長男の昌也さんと二人がかりで三ヶ月目、「時間をかけてもいいので良いものを」という注文に本物の孔雀を探しにわざわざ動物園にまで行くほどだ。「いい仕事をさせてもらえるとどんどん細かいところまで手を入れたくなる。職人とはそういうものだ」と話す笑顔に職人のプライドとこだわりがにじみ出ていた。(大阪欄間:国と府から伝統工芸品の指定を受けている)