隠岐諸島の巨樹の森
・産経新聞 2006/6/8
島根県の隠岐諸島では、豊かな緑を楽しむ事ができる。最大の島、島後では、大滝が流れ落ち、大森林が延々と続く。鷲ヶ蜂やトカゲ岩周辺には原生林が残っている。旧布施村に「隠岐造林始祖四氏の碑」が建つように、植樹を昔から続けてきた島内には、とてつもない巨樹が点在している。代表的なものとして「八百杉」「中村のかぶら杉」「岩倉の乳房杉」が上げられる。この三つの杉などを隠岐島エコツーリズム「自然環境陸上コース」として結ぶ計画が進められている。また、オキシャクナゲ、ツバキなどが、巨樹を結ぶ回廊の森林道に自生しているので、森林浴も楽しむことができる。樹齢2000年を超えるという「八百杉(総社杉)」は樹高30メートル、根元の周囲20メートルにも及び、6本の柱に支えられて立っている。その昔、若狭からやってきた、人魚の肉を食べ老いることを知らない比丘尼が植樹したと言われている。「中村のかぶら杉」は樹高1.5メートルで、8本の支幹に別れて、直立している。島後の最高峰「大満寺山」の麓にある「乳房杉」は、樹齢はおよそ800年で、長いもので2.6メートルもある大きな鍾乳石状の乳根が20個以上も下がり、独特の姿をしている。「壇鏡神社」の鳥居前には、巨大杉が2本聳え立っている。その昔、出雲大社が建て替えのため杉の供出を命じたが、この名杉を惜しんだ氏子達は、鳥居の場所を移し、杉は神社外のものだと言い、杉を守ったと伝えられている。このようにして、島民たちの努力により、今日まで立派な杉が残ってきたのであろう。