被爆のアオギリ
・毎日新聞 2006/6/7
被爆から61年、8月6日に広島市内で「アオギリサミット」が開かれる。「アオギリサミット」の「アオギリ」は爆心地の北東1.3キロにあった旧広島逓信局(現日本郵政公社中国支社)の中庭にあった4本で、被爆した。爆心地側の幹が熱線にえくられたものの樹皮が傷跡を包むように成長し、焦土にふいた若葉が被爆者を勇気付けた。73年に平和公園に移植され、現在も2本が毎年青々とした葉をつけ広島復興のシンボルになっている。サミットはアオギリ2世を育てている全国各地の団体や個人が平和公園にある被爆アオギリに集まり、2世の分布状況・発育状況を報告し、平和への願いを再確認する。主催は被爆者の証言活動を支援する団体などでつくる実行委員会で、各地の発育状況をしめす「世界被爆アオギリ2世マップ」作成の提案や被爆体験を話す環境作りを推進するNPO法人の設立の検討、各団体が持ち寄ったアオギリの写真展示会も行う計画である。被爆体験を語り続ける沼田鈴子さん(82)を通じ被爆アオギリの種や苗は、全国の人々に手渡されている。92年からは希望する学校などに広島市が900本以上を配布。アメリカやイギリス、イタリア、ドミニカ共和国などへも「物言わぬ語り部」として贈られた。
沼田さんは22歳で被爆し、左足を切断した。自殺も考えたがアオギリの生命力に魅せられ生きる力を取り戻したという。沼田さんは「命や平和の尊さを静かに確認しあうサミットにしたい」と話す。