足枝に木の町の名残
・日本経済新聞 2005/10/1
東京都無形文化財の「木場の角乗り」は水に浮かぶ角材を紀陽に足で回し、その上で様々な技を披露するバランス芸だ。区民祭りが開かれる木場公園の池が舞台となる。東京都江東区は1701年に材木問屋らが掘りや橋を作り始め、木材取引の中心として発展した。木材問屋や仲買、皮に浮かんだ木材を集める川並、いかだ師、荷揚げの職人らの町だった。その中で、川や堀に浮かぶ木を飛び歩き木材の尺や太さを測り直して検品し、問屋に運び、きれいに並べたのが川並で、「木場の角乗り」はその見事な足技を余興として楽しんだのが始まりとも言われる。しかし、今は現役の川並はいない。川並がいたのは昭和まで小学生を含めた保存会のメンバーが毎年5月から角乗りの練習に励み、伝統を受け継ぐ。練習むなしく、角材から転落することもしばしばあるが、芸達者ぞろいだった昔と異なり、失敗もご愛嬌。伝統の技を皆で守りたいという心意気に下町の人情を感じられる。