森林保護の重要性実感
・毎日新聞 2005/9/26
「MOTTAINAI(もったいない)」キャンペーンを提唱しているノーベル平和賞受賞者ワンガリ・マータイさんの母国ケニアを日本の大学生グループが訪れた。ケニアでは、薪や炭が生活に欠かせず、エネルギー需要の80~90%を占めるにも関わらず、森林面積は国土の2%で、また、国土の84%が乾燥地か半乾燥地で農業に適した土地はわずかであり、緑化や植林は環境保護だけではく、エネルギー政策上も欠かせない問題となっている。学習ツアーは「人に伝えたいMOTTAINAIのこころ・ケニア社会林業活動プロジェクト」で富山大、早稲田大、学習院大、吉備国際大、新見公立短大の5大学の学生ら18人が参加。富山大の佐藤幸男教授(国際政治)と高橋満彦助教授(環境法)が引率した。4日から12日までケニア林業研究所(KEFRI)の訓練マネジャーのマイケル・マコールイさんたちの案内でケニア各地の農家やKEFRIの施設、植林現場などを見てまわった。学生たちがまず訪れたのは首都ナイロビから東へ170キロにあるキツイ。バスでの移動中、道端では炭や薪を売る人々がいた。炭は樹木1本から2袋しか作れず、売値は1袋200円程度(労働者の1日平均賃金が約300円)というが、農業だけでは食べていけない多くの人は炭や薪をお金に換えて暮らしを支えているのが現状だ。キツイでは「土地が肥沃でないため、農民が次々に場所を移して開墾し、森林が失われる。木を植えて育てる『社会林業』を通じ、いずれ森林面積を国土の10%にしたい」というKEFRIのポール・コヌーチェ所長の話を聞いた。KEFRIはマータイさんが副大臣を務めるケニア環境・天然資源賞の下部組織で、「グリーンレーベル」運動の精神を踏まえながらケニアの緑化に取り組んでいる。ケニアの緑化事業は日本とも関わりが深く、KEFRIの本部も日本の援助で完成した。環境・天然資源省森林局には国際協力機構(JICA)と林野庁から3人が派遣されており、共同プロジェクトチーフ・アドバイザー佐藤雄一さんは学生からの「貧困を解消しないと森林破壊を招く悪循環が続くのではないか」の質問に対し、「ケニアの人の木に対する関心は日本よりも強い。でも日本人が二酸化炭素を排出するとわかっていても自動車を運転するようしかないように、ケニアでは森林の大切さがわかっていても伐採して売らないと日々の食料に事欠く現実がある」と答えた。また、佐藤さんは学生たちに「付加価値の高い木を育て、技術開発や農民教育を続けることで農民参加型の植林を根付かせる必要がある」と説き、学生たちも真剣に佐藤さんの話を聞いた。ケニアの学習ツアーは学生たちにとって、「資源は有限、森林は大切に育てながら利用するもの」ということを実感した旅となった。