桜の名所にフラワーパーク
・日本経済新聞 2005/9/19
桜の名所として全国に名高い長野県高遠町。開花時期には年間の79万人のうち半数の観光客が訪れにぎわうが、桜以外の観光資源は乏しい。そこで、年間を通じて観光客を呼び込むため地元住民がフラワーパーク「ポレポレの丘」を開設、新たな観光資源に育てようとしている。ポレポレの丘は5月、城址公園から来るまで5分ほどの小高い丘に開園した。運営は地元住民らで組織する「信州高遠花摘み倶楽部」で、呼びかけ人でもある理事長の赤羽久人さん(56)は「高遠の桜は全国のブランドだけに、花による町おこしができないか」と友人や知人を誘って設立したと話す。副理事長の矢沢親男さん(65)は「年間を通じて観光客を標準化させないと観光産業は成り立たない」との危機感から賛同したという。敷地は私有地で、棚田や雑木林などが入り乱れ、遊休地も目立ち、地権者らは遊休地活用につながると計画に理解し、町の仲介で倶楽部と土地の賃貸契約を交わした。設備にかかった費用は約2千3百万円。県からの補助金のほか、メンバーの出資、金融機関からの借り入れなどで賄った。専従職員も2人雇っており、年間の必要経費は千万円弱かかるのに対し、これまでの入場客は焼く5千人で入場料収入(大人600円)だけでは運営できない現状。打開策として年間2千円の有料会員の募集を始め、地元住民を中心に2百人以上が登録した。植え替えコストを削るため多年草など増やすなどの工夫も凝らしている。「地主制度」も設け、園内を歩くと花畑の前に占め地お居住市町村を明記した表札がある。「地主」には雑草除去などの整備を委託しており、中高年を中心に40人ほどが参加。報酬はほとんどないが人との触れ合いを求めて希望する人も多いという。ただ、採算ラインを確保できるかは微妙な状況で、継続には入場料収入の増加が不可欠。町の観光客数の5%を呼び込めれば採算がとれるとみており、町などと協調しPRに努めている。