若き将軍の五輪塔
・読売新聞 2005/8/22
神奈川県鎌倉市にある鎌倉国宝館に鎌倉幕府3代将軍、源実朝を供養する楠で出来た木製の五輪塔がある。これは神奈川県秦野市にある「源実朝公御首塚」の上に立っていたと伝えられている。1192年、源頼朝と北条政子との間に生れた次男、実朝は、有力な一族の武士でさえ字を読めなかったという時代に、私家集「金塊和歌集」を編んだ若き英明な将軍である。しかし、当事は武門の本分を忘れていると、膝元の東国武士たちの反感をも買い、これが悲劇へとつながっていった。実朝の知的好奇心は異国の地へも進み、現在神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮にある老木の柏槇(びゃくしん)は、実朝が中国の宋から種苗を取り寄せ植えたとされている。もうひとつ実朝にまつわる巨木があり、樹齢1000年を超える大銀杏がある。1219年1月、この銀杏の影から頼家の遺児、公暁が踊り出できて実朝に斬りかかり、首を討ち取る。(実朝暗殺) 実朝を偲ぶものは不思議と木とゆかりが深い。