杉並木の憂うつ
・日本経済新聞 2005/5/27
ギネスブックに世界一長い並木として載っている日光杉並木。例幣使街道のほか日光、会津西の3街道で全長37キロ、およそ1万3千本あり、国の特別天然記念物に指定されている。しかし、クルマ社会の影響などでこの40年間に約3千5百本が枯死した。杉を守るために、10年前から杉のオーナー制度ができたほか、並木周辺の土地を買い取るなど、栃木県が中心となって樹勢の回復を図っている。オーナー制度は杉並木を1本1千万円で購入するもので、法人も含む554人が参加している。杉並木保護基金は約56億円あるが、想定外のゼロ金利が続いて運用益は思うにまかせず、栃木県が予算を補てんしているのが現状である。杉といえば気がかりなことが花粉症。花粉症の原因として目の敵にされてしまっている。日光の杉も老木といえ春先には黄色い花粉が風に舞う。同権教育委員会文化財課 滝田隆志さんは「今市や日光市民の間に花粉症が特別に多いわけじゃないと思うんですけどね」と話す。なお、杉並木はJR日光線文挟駅あたりで、土の小道から車道になり、車が猛スピードで通過する。これだけの歴史・自然遺産がありながら安心して歩ける道がないとはもったいない限りである。