考古学では、放射性同位体の計測をもちいて、遺跡や異物などの年
代測定に利用
している。生物は常に新しい炭素を取り入れており、大気中の同程
度のC14が存
在する。しかし、死によって活動が停止したり、樹木の年輪となっ
た内側の組織
などには、新たなC14の供給が止まる。そして、C14は崩壊してゆく
ことにより
徐々に減っていく。古いものほど減っており、半減期は5730年にな
る。このC14
の濃度を測ることで年代を推測する事が可能である。
しかし、大気中に含まれるC14の濃度は常に変動している。例え
ば、C14濃度が大
きく増えた時期は、現在の残量よりも増えてしまい、現在より新し
いという測定
結果になってしまう。対策として年代ごとのC14の計測が可能な木
の年輪を測
り、時期ごとの違いを補正している。
そうした計測の中から、奈良時代の西暦775年に、過去最大級の
宇宙線が降り
注いでいたことが判明した。研修は名古屋大量地球研究所の増田公
明教授らに
よって進められている。そもそもC14は、宇宙線が大気と反応して
作られる。C14
の変化は1年で平均0.06%程度とごくわずかの変化にもかかわ
らず、775
年は前年と比べ1.2%も多いという計測結果が出た。
計測の決めてとなったのは、国の特別天然記念物・屋久杉(鹿児島
県)の年輪に
残ったC14である。切り株は直径2メートルにもなる。
増田さんによると急変については、2つのケースが想定できると言
う。
1つ目は、超新星爆発である。星が一生を終えた際に起こる大規模
な爆発であ
り、強い宇宙線(高速の粒子)によって、大量のC14ができると言
われている。
記録では1006年や1054年の発生が知られているが、775
年には超新星
爆発と思われるような記録は残っていない。また、年輪のC14濃度
から推定され
る宇宙線の強度は1006年の100倍にもなるという。
もうひとつの可能性は太陽フレアである。太陽と似た恒星を調べれ
ば、巨大フレ
アといわれる通常の1000倍の規模になるものが、5000年に
一度の頻度で
発生している。地球に強烈な電磁波や宇宙線をもたらし、現代であ
れば電子機器
にも壊滅的な被害をもたらす可能性があるという。