貴重な桜を守る保全事業を日本製紙グループ本社(東京)が進めている。10年ほど前から枯れそうな名木や、絶滅しそうな桜の枝を集め、100種類もの桜を独自の技術で再生し元の場所へ植えるのである。日本製紙グループ本社の庭園には再生した兼六園の冬桜などの3本の桜が11日に見ごろを迎えていた。78種類の桜の再生の元となっているのは静岡県三島市の国立遺伝学研究所が保存する260種類である。冬桜の他に、宮城県塩釜神社のシオガマザクラや奈良県笛吹神社のウワミズザクラなどがあり、老 木から枝を切り取り、苗木を作り東京都北区と徳島県小松島市の研究所で育てている。紙の原料となる樹木の研究をする中で培われた「容器内挿し木技術」は、光と二酸化炭素濃度を調節できる培養室で人工的に光合成が盛んになる環境をつくり、苗木の成長を促すのである。遺伝学研究所からの依頼を受け、桜の保全事業を社会貢献活動の一環として始め、アグリ事業推進室の村上章室長は「文化的、遺伝学的に貴重な資源を後世に残したい」と語る。