マラウイ、アフリカの南東部にあるザンビアと国境に接するカスング国立公園近くの森で火の手が上がった。近くの農家のフランク・ムワーレさんは「ここをトウモロコシ畑にする。木を刈る人を雇う金もないから燃やすのが最も手っ取り早い」と話す。「こうすれば消せる」と大きな葉を振りおろして炎をたたいたが、周囲には川も池も なく火はくすぶり続けた。農業国のマラウイは北海道と九州を合わせた程の面積で、30年で人口が2.5倍の約1500万人に増加した。1日の生活費が1.25ドル以下と国民の4分の3は貧困水準である。多くの人が焼き畑農業に従事する。カスング国立公園のアルフィウス・ピリヤ所長は「森が消えるのはそのせいだけじゃない」と嘆く。森のあちこちで木が何ヘクタール単位で焼け、ぽっかりと穴が開いたようになっているのである。「密猟者が動物を追い詰めるために火をつけるんです。バファローなどの肉が売れるから」。約2300平方キロメートルもの公園を守るには職員約60人では難しい。他にも、地中のネズミを食用に捕らえるための放火、たばこの火による失火もある。1990年以降、毎年1%弱、330平方キロメートルずつ森林は失われ、今世紀末には消えてしまうことになる。政府は「森や木がなくなれば未来もない」とのポスターで防火を呼び掛けるが、生活がかかっている人々に対し効果はなかなか上がらない。