大津波に襲われた仙台市若林区から宮城野区にまたがる海岸林に、秋田県森林技術センターや森林総合研究所などのチームが16か所の調査区域を設け、計測可能であった452本の松について、高さ1.2メートル付近の幹の直径と葉が茂っている部分(樹冠)が水につかった深さを調べ、被害との関係を解析した。幹が直径20センチを超える太い ものや、背の高かったので樹冠が浸水しなかった樹木は津波や水の力に耐えられたとみられる。しかし、根返りは大きさに関係なく起きていた。マツはふつう、数メートルまっすぐ伸びた直根で樹体を支えているが、地下水面が高いとそれより下に根がよく発達しないため、計測できた根返りしたマツ49本の平均は78センチとかなり短い結果となった。秋田県森林技術センターの田村浩喜主任研究員は「地下水位が高い場所でも、横に伸びる根を増やして地上部を大きくすることはできる。でも直根の発達が悪い木は、津波に耐えられず、根返りを起こしていた」と話す。地下水位の高い場所や湿地帯のある海岸部を土でかさ上げして、海岸林を育てる取り組みは過去にも実施されてきた。福島県相馬市の松川浦に、土を入れた上に育てた海岸林と、そうでない海岸林が隣接した場所があり、後者の場所では根返りして流木となる被害が目立っていたという。「被害を定量的に把握できていないが、海岸林の流木化はなんとしても避けるべきだ」と東北大学院の宮城豊彦教授は語る。流木の発生を防ぐためや、減災機能を維持するためにも海岸林の直根を発達させる生育基盤の確保が大切になっている。2月1日付けで林野庁の検討会は「地域の防災機能の確保を図る観点から、飛砂・風害の防備等の災害防止機能に加え、津波に対する被害軽減効果も考慮した海岸防災林の復旧・再生を検討していく必要がある」という最終報告を公表した。再生にあたって以下の4点に留意するように促した。林帯幅(林の奥行き)の確保、根の健全な成長を確保する生育基盤のかさ上げ、津波を減衰して背後の林を守る人工盛り土の造成、マツ以外の樹種も活用した森林の構成。太田猛東京大学名誉教授は検討会の座長も務め、「再生は長期にわたるが、この報告を土台に、よりよい海岸林を残してほしい」と語る。