住まいづくりは風土に根ざした地域の生業として成立しており、その素材はちょっと昔まで、ほとんど木や竹、土、紙などの自然素材であった。しかし、現代では、多くの化学物質によって成立しており、人工的に作られた素材のリスクを完全に把握するのは困難である。そして「シックハウス症候群」などの問題が起き、さまざまな変調 を訴える人が増えた。こうした今、見直されているのは昔ながらの自然素材を使った家づくりである。無垢のスギやヒノキなどを構造材や内外装材に使用し、土やしっくいを壁に塗り、塗料などにも天然由来の成分を使う。自然素材は、経験的にその問題も安全性もわかっており、人とのマッチングがよい。素材自体が室内環境を整える効果があり、循環型であまりエネルギーを使わないで再生産が可能なことから、住まい手にも自然環境にも優しい。自然素材によく通じた職人さんが必要であり、素材の性質をよく読んで使うことが求められることに注意したい。合理性も大事であるが、自然素材が持っている多様な価値をもう一度見直し、住まいづくりをおおらかに行うことをお勧めする。