青森県十和田市。奥入瀬渓流を抜けると、そこには空の色が溶け出したような青い湖「十和田湖」が広がる。周囲の山々にはブナやカエデが生い茂り、湖の東岸からは奥入瀬川が流れ、その最上流は国の特別名勝「奥入瀬渓流」となっている。湖から焼山までの渓流、約14キロには、ブナやカツラ、トチノキなどが群生する落葉広葉樹林が続き、陽射しを遮る森のカーテンとなっているのである。また、渓流には本来存在するはずのない針葉樹のスギが点在している。これは、十和田湖畔に鎮座する十和田神社への参拝道である渓流で道に迷わないために、道しるべとして植えられたのではないかと言われている。神社の境内に立ち並ぶ樹齢250年を超えるスギを見上げると、そんな気がしてくるという。上流には「阿修羅の流れ」や「平成の流れ」、「玉簾(たまだれ)の滝」があり、冬には「白絹の滝」も姿を現す。秋になればカツラが蜂蜜のような香りを放つ。四季折々に表情を変える自然の姿がここにはあるのである。