木の心地良さを改めて見直し、日本の林業を再生させたいと活動する「木暮人倶楽部」(東京都文京区)が5月に発足した。参加者は専門家だけでなく、木に関心がある人であれば誰でもよく、115人の個人や団体がいる。発起人である吉田就彦さんは「生産者から消費者までの情報を集め、発信するプラットホームを目指している」と話す。「だんご3兄弟」などの宣伝に関わってきたポニーキャニオンの元社員である吉田さんは、「葉枯らし」という手法で乾燥させた国産材をプロデュースしようとしているのである。木を切り倒し、葉をつけたまま、葉の蒸散作用を利用して幹から水分を抜く方法である。この方法で乾燥させると、木に有機化合物のフェノール性の物資が生成され、防虫、防カビ効果が高まると参加者である京都大農学研究科の高部圭司教授(樹木細胞学)は話している。昭和30年前までは広く行われていたが、現在は、機械による強制乾燥が主流になっており、「機械の乾燥は木の付加価値をなくしている」と高部教授は指摘する。昨年の5月、自宅を新築するための建材を探しているときに、吉田さんは葉枯らし乾燥に出会った。色合いや香り、肌触りなど自然の力が作り出した木材の質の高さにひかれたのである。産地の一つである浜松市に足を運び、熱心に葉枯らし乾燥に取り組む林業家がいることを知るが、経済効率が悪いことから少人数しか手がける人がおらず、日本の林業の衰退の実態を知ったのである。日本の木材自給率は、昭和30年では90%を超えていたが、現在は30%に満たず、林業就業者は40年には約26万2千人いたが約4万7千人までに減ったというのである。就業者の減少について林野庁では「木材価格の下落により林業の採算性が悪化する中、森林所有者経営意欲の低下により林業生産活動が停滞している」との分析である。吉田さんは「良質の木材の需要を増やし、その生産に取り組む林業家が増えることが、林業の再生につながる」との思いから木暮人倶楽部を発足させたのである。発足して間もないが「ログハウス部会」「商品開発部会」「設計者部会」など活発に勉強会などが行われている。木暮人倶楽部の会員数を「10年後に100万人」にするという目標を胸に、吉田さんは「100万人集まると世の中が変わる。10年かけて目標を達成し、自然とともにある林業を蘇らせますよ」と話している。