岩手県陸前高田市に一本の松がある。樹齢は実に260年以上。クロマツとアカマツの交雑種でアイマツと呼ばれるこの松は、津波でなぎ倒された約7万本の中の唯一の生き残りである。「復興のシンボルとしてずーっと生きていてほしい」。地元住民の心の支えとも言えるこの一本松は、海水による根腐れを防ぐためにポンプでの排水作業が続けられている。一方、陸前高田市から北西へ100キロほど行った山中で、一本松と同じ遺伝子を持つ「クローン苗」が育っている。一本松から枝を採取・接ぎ木した結果、苗7本から新芽が確認された。そのうち4本は「ツギキ四兄弟」として長男から順にこう命名された。「ノビル」、「タエル」、「イノチ」、「ツナグ」。