京都市文化財保護課の電話が鳴り響く。事の発端は「京都五山の送り火」である。「大文字」で使用されるはずだった岩手県陸前高田市の名勝「高田松原」の松で作った護摩木を燃やす計画が中止になったのである。東日本大震災の影響で放射能汚染を危惧する一部の声を受けて京都市は中止に踏み切ったが、計画の中止が報道され、約300件に及ぶ抗議電話が相次いだ。そのほとんどは「被災者の気持ちを無駄にするのか」「京都のイメージダウンにつながる」といったものであった。放射能汚染を恐れる人々の気持ち、「中止反対」の鳴りやまない電話、そして被災者らの気持ち。事は単純ではないが、「論拠のない中止」は人々の不安をあおるだけではないだろうか。