「自動車産業の市」というイメージのある愛知県豊田市足助町には森が広がっている。同市を流れる矢作川流域の森の保全活動を行う「矢作川水系森林ボランティア協議会」副代表の稲垣久義さんは「森の健康診断」を行っている。森の現状を科学的な手法で数値化して理解できるように専門家グループと連携し、マニュアルを作った。「5メートル四方に何が生えているのか」「腐葉土の厚み」などの項目を100円ショップで揃えれる巻尺や物差し、方位磁針などで調査する。気軽に参加できることもあり、毎年6月に実施している調査に今年は約180人が参加した。照りつける太陽のない涼しい植林されて45年程の森に入った。稲垣さんは長さ約5.6mに調節してある釣りざおを取りだし、中心となる木を決め円を描くように動かした。これは調査項目のひとつであり、この時ぶつかる木の数を数えるという森を舞台にした実験である。円の面積は約100平方メートルで、その範囲に高さ10メートルを超えるヒノキなどの針葉樹は18本生えていることがわかった。稲垣さんの解説によるとヒノキの根が一部露出しており、落ち葉がない様子で、これでは土砂崩れの危険性が増えるという。根の近くに広葉樹のコシアラブが育っていたが「光が入らないので枯れてしまう」という。「木を切らないことが森を大切にすることだとする人が多い。適度に木を切らないと森全体がだめになってしまう」管理された森にも行ったが、間伐がされているので、光が差し込み下草が生えている。「森林の健康診断」を広げようと稲垣さんは、全国約30都市で説明してきた。独自に調査を行う地域も増えているという。