「不燃木材」というものをご存知だろうか。ホウ酸系やリン酸系などの薬剤を木材に染み込ませ、乾燥させて製造される建築材料の一種 だ。商業施設や鉄道の駅舎、公共施設など、特に火災の拡大や煙の発生を抑えなければならない施設の内装などに木材を使う場合は、使用 が義務付けられている。2000年施行の改正建築基準法で、防火性能などが一定の基準を満たせば、木材でも「不燃」としての使用を認める「性能規定」が導入され、大臣認定を取得する動きが広まっていった。 しかしこのほど、認定を受けた複数の製品が定められた防火性能の基準を満たしていなかった事が国土交通省の調べでわかった。サンプ ル調査された10社10製品のうち、9社9製品が「不適合」とされた。これらの不適合木材は、日本各地の人気スポットにも利用されていると いう。2008年に開業した大阪市の京阪電鉄中之島線の4駅では、地下にある駅ホームの壁一面や地上部分などにも使用されている。世界一の 高さを誇る電波塔「東京スカイツリー」。ここを中心に建設が進む「東京スカイツリータウン」の商業施設「東京ソラマチ」では、7月以降 に工事を始める予定だが、ここ で使用される予定の木材は、性能不足が指摘された企業の商品と同一のものであった。事業主体の東武鉄道 の担当者は「日本の美しさを表現するために木材を使う構想。法的には『準不燃』で問題ないが、規格上『不燃』の製品を使う事にした」 と話している。今後、事実関係を詳細に確認する予定だ。他にも、羽田空港国際線旅客ターミナルビルの「江戸小路」や西武百貨店池袋本 店8階の店舗でも、同様に性能不足の木材が使用されていた。性能不足の木材が流通しているといううわさは業界内で以前からささやかれていた。メーカーから入手した不燃木材を用いて公的機関で 性能試験を行ったところ、不燃基準の20分間どころか、わずか10秒で発火し、1分40秒で発熱量の基準値を超えたものもあったという。こうした背景には、大臣認定を取得した後は、木材の品質管理が業者任せになっているという実態がある。今後は、国が主導してチェッ クする新たな仕組みが必要とされそうである。また認定に問題のなかったアサノ不燃木材の浅野成昭社長は、不燃木材の品質管理を徹底する業界団体の結成を構想し、薬剤注入前後の重さを比べ木材に入っている量を確認したり、会員企業の製品の防火性能を確認し合ったりするため、すべての製品をバーコードで管理することを提唱する。