東日本大震災で被災した宮城県石巻市で工学院大学(東京)の建築学者らが、永住型の木材住宅の建設に乗り出す。7月に、土地を借り地元の木材を使って10棟を完成させる計画で、永住を前提にコミュニティーも育てる狙いである。津波からの被害を逃れた標高30~40㍍の高台に建設予定である。室内から木の柱やハリが見える伝統工法を採用し、延べ床面積約66平方㍍の木造2階建てと約43平方㍍の平屋建ての計10棟の予定。工事の開始は5月中旬で2ヶ月に完成予定である。同県登米市の工務店を経営する伊藤秀夫さん(57)が施工をし、「地元の材木を使い、被災した職人を雇いたい」と話す。一人暮らしの高齢者や震災孤児が一緒に生活できる住宅にし、ともにコミュニティーの構築を目指す。2階建ての住宅では共同の浴室やトイレを使って2世帯が暮らすことも想定している。地元の漁師である佐々木義延さんは「仮設ではなく、自分たちの住まいが決まるのは安心する」と話す。この計画は多くの民間の支援から成り立っている。仙台市の医師から、約2千平方㍍の土地を工学院大が低額で借り、計画の学術的な価値を評価した住生活グループは、被災者支援の意味も込めて工学院大に最大2億円ほど寄付をするという。大学と25年間の定期借家契約を結び、入居者の負担は、2階建てで月3千円超の借地料を含む1万7千円という。家賃収入は石巻市に寄付し、将来、市か自治会に権利を譲る考えである。工学院大の後藤治教授(日本建築史)は、三陸海岸は平地が少ないので、仮設よりも永住向きの住宅を建てる方が合理的だと考えている。「仮設だけでなく、被害者が長く住める家を早く供給することが必要だ。民間が支える枠組みの部分を政府が代行し、各地で早期に恒久的な住宅をつくることは可能だろう」と話している。