今秋の記録的な暖かさの影響で紅葉前線の南下が遅れており、「例年より、5-10日程度、紅葉が遅れている」と各地の関係者は話す。また、色合いがいま一つのところも目立つ。18日の奈良市奈良公園の850本のカエデの葉はほぼ青いままで、ナンキンハゼは見ごろを迎えているが、「茶色っぽく、ぼやけた感じ」と公園管理事務所の担当者は語る。京都府立植物園の肉戸裕行樹木係長は「今年は最低気温が高めの日が続き、色づきが遅れた」という。この50年で今月上旬の近畿地方の平均気温は最も高いと大阪管区気象台はいう。偏西風が蛇行し、東アジア全体が南からの暖かい空気に覆われたのである。また、兵庫県豊岡市の安国寺では今月中にドウダンツツジが見ごろを迎えたが、赤みが薄く、黄色っぽい葉が多い。京都市左京区の三千院でも黄色い葉のまま落葉してしまった木もある。筑波実験植物園の岩科司園長は「鮮やかな紅葉の条件は夏と秋、昼と夜の温度差が大きいこと」と話す。木は急に寒くなると、葉を切り離す準備を始め、光合成でできたでんぷんが葉にたまり、それが紫外線を受けて赤い色素を生み、紅葉となる。ただ、寒くならないとでんぷんが幹に流れ続け、色づきが悪くなるのである。年々紅葉の時期が遅れている。奈良市では、カエデは1950年代では11月上旬に紅葉していたが、今では約18日遅れの11月下旬が普通となっている。岩科さんは「温暖化が進めば、紅葉が見られなくなる可能性もある」「気温があまりに高いと、赤い色素ができにくくなり、黄色い状態で落葉するようになるかもしれない」と話す。