現在、正倉院展で公開中である沈香の香木「黄熟香」(通称・蘭奢待)が日本に来る前から、沈香を薬や交易品としてベトナムの王族たちは珍重してきた。ベトナム最後のグエン王朝、2代ミンマン帝の子孫であるグエン・フーク・ウン・ウィエンさんの屋敷に、天井をも突き破りそうな沈香の巨木が並ぶ。乱伐などで激減する中、グエンさんは沈香を後世に残そうと天然木を収集したものである。その中の一部は龍や植物が職人の手によって彫りこまれ、見る人を圧倒する。