玉石の石積みの上に太い杉丸太が組み合わされた山小屋のような外観、屋内は波模様に削ったナラの板が張られ、天井にはシラカバの飾りが施されている。霊峰・御岳山のふもと、1933年開業の飛騨小坂駅・木造の駅舎である。御岳山の玄関口で、林業が盛んだったこの地域の象徴である。1960年代には駅の年間乗客者数は20万人を超えたが、次第に登山客を長野県に奪われ、昨年度は4万2千人であった。駅舎の近くで生まれ育ったという画家の田立泰彦さんは、昨年、駅舎のスケッチに通った。木の温かさや現役約80年の風格。相対して初めて、細部の意匠に気が付いたという。今春の無人駅化を機に、登録有形文化財を目指そうと声をあげ始めた。数人の有志と駅舎を掃除し、花を飾っている。