佐渡島に杉の巨木が群生する原生林があり、世界遺産に登録された鹿児島県の屋久島の縄文杉などの古代杉群に負けないそうである。2007年に世界的な写真家である天野尚氏が佐渡原生林の写真集を発表し、翌年の洞爺湖サミットの晩さん会場で巨木杉の特大写真が飾られて以来、脚光を浴びている。山毛欅ガ平山(ぶながひらやま)山麓の新潟大学演習林とその周辺に原生林はある。原生林を守るために県や佐渡観光協会は年間2000人までのトレッキングツアーを制度化した。3つのルートが整備され、内 海府ルート、外海府ルート、千手杉ルートがある。今回は色とりどりの山野草が楽しめる内海府ルートを紹介する。トレッキング開始後すぐ江戸時代作石仏が残っている。紫色のヤマトリカブトがいたるところに見られ、ピンクのオオスミソウや紫のエゾアジサイなどの植物が多く群生している。演習林は他地域と比べ約500ヘクタールと小規模であるが、希少動植物は500種類以上もある。出発から1時間ほどで、根元から3本枝分かれしている通称「迎えの三本杉」という巨木杉が出迎えてくれる。登山道の脇にある不動明王や、大日如来、地蔵菩薩などの石仏を見ながら登り、演習林の林道にでる。その奥には樹齢500年を超す巨木杉「関越えの仁王杉」が待ち構えている。事前に許可をとり、サミットで各国首脳をうならせた「金剛杉」を目指した。周りの巨木杉を家来のように林立し、幹周りは8、9メートルはありそうである。林道に戻ると、「王様の小径」と呼ばれる巨木杉が次々と現れてくる。中には「大王杉」と呼ばれる樹齢500年以上の幹周り7メートル、樹高25メートルの木や「トンネル杉」「タコ杉」と命名されたものがある。「一本として同じ形がない。どんな生きざまなのか。生命力には感心する。」と観光協会の専門ツアーガイドの斎藤浩二さんは話す。下山中も白色のウメバチソウの花や、ツバメオモトのコバルトのような実が観賞でき、峠の草原である「大倉のシラバ」に出た。さらに下り原生林が続き、7時間半にも亘るトレッキングが終了した。