ワンガリ・マータイさんはケニアの女性環境活動家で、2004年にはノーベル平和賞受賞。25日に71歳で亡くなるまで、「もったいない」という日本語を環境保護の合言葉として世界中に広めてきた。モノを粗末にしないということは世界中のだれでもができる行為であり、生活様式の異なる人々が共通の環境意識をもつために最適の言葉であると語っていた。63年に独立を果たしたケニアでは、主要産業であるコーヒー栽培などの農地開発のため、森林伐採が加速した。そのため、生活に不可欠な薪に事欠くばかりか、雨が降る度に肥沃な土壌が流され、農産物が減少する事態を招いたのである。マータイさんは「森林伐採が問題の原因」と考え、77年に女性による草の根の植樹活動「グリーンベルト運動」に乗り出した。国連によると、この運動は他のアフリカ諸国にも広がり約90万人が参加、約4700万本が植樹された。しかし、多くのアフリカ諸国は今、経済成長実現のために天然資源開発に急いでいる。その陰で、砂漠化などの環境破壊や貧困といった問題解決の兆しはない。マータイさんが啓発に努めた「開発と環境保護の両立」は次世代に託された課題となった。