経営難に陥った滋賀県造林公社の破綻が回避されたのは、391億円の負債について、債権者の大阪府などの9自治体が8~9割の債権放棄で合意したためである。同公社は1965年に設立され、1972年度までに滋賀県内の山林約7000ヘクタールにスギなどを植えた。琵琶湖と下流にあたる淀川の水資源確保に役立つことから、地元の滋賀県のほか、大阪府や大阪市なども資金を提供していた。国産材価格が下落し、事業環境が大きく変化したことにより育てた木の伐採収入で借金を返し、利益を山林の土地所有者と分け合うという期待くずれた。スギを例にとると、伐採や輸送費用を除く立木状態の木材価格はピークの1980年に比べ9割近く下がった。仮に売却しても、多くの借金が残ってしまうのである。公社は2007年11月、裁判所の仲介で債務を圧縮する特定調停を申し立てたが、関係する自治体間で債務放棄の額などの交渉が難航していた。2008年10月調停を最後に交渉は中断した。協議が再開したのは昨年11月。今年1月、9自治体は債権391億円のうち323億円を放棄することで合意にこぎ着け、調停が成立する見通しとなったのである。差額の68億円については、公社が事業を継続することで、木材伐採の収益が得られると見込んでいる。同様の問題を抱える造林・森林公社は少なくない。神奈川、大分などすでに公社を解散した県もある。存続する滋賀県の公社も見込み通りの金額で、育った木が売れるとは限ず、公社の事業について「モデルそのものが破綻しているとの声もある。