フィリピンでは、森林保護に携わる係官らが違法伐採グループなどに殺害される事件が相次いで発生している。被害を防ぐ特効薬はなく、政府は違法伐採の背景にある山間部の貧困対策を模索し始めている。フィリピン南部ミンダナオ島の北東部に位置するカラガ地方には、広大な森林が広がる。その一帯で昨年末から年明けにかけて相次いで地滑りが起き、約200世帯が流されて20人以上の住民が犠牲になった。地滑りの原因として指摘されるのが、違法伐採である。カラガ地方で森林保護に携わる保護官や警察官の犠牲は、昨年8月以降だけで3人である。昨年6月に発足したアキノ政権は違法伐採の取り締まりを強化。昨年8月、許可申請中のものを含め、民間業者に天然林からの伐採の許可を一切与えない方針を決めた。環境保護NGO「カリカサン」によると、2001年から昨年までに40人の保護官や環境保護活動家らが、違法伐採グループによる殺害や戦闘で犠牲になった。の山中で銃撃され、警官1人が死亡した。犯人はゲリラか違法伐採グループか不明だが、レイエス所長は「軍や警察はゲリラに狙われている。護衛を頼むことがかえって危険な場合もある」と頭を抱える。ミランダ氏は「違法伐採をなくし、保護関係者の命を守るには、山間部の貧困をなくして違法伐採グループから引き離すしかない」と指摘する。山間部には約2500万人が住んでいるが、飢えれば違法伐採グループに使われてしまう。これは貧困問題。農業省などと協力してカカオ、コーヒー、マンゴーなど市場価格の高い作物を植えたりすることで、森林伐採以外の生計手段を持ってもらうのが我々の目標であるという。違法伐採者にどう対処するのか。アキノ大統領は犯罪者を摘発しろと指示している。ただ問題は、実際の伐採は貧しい住民によって行われているということだ。一方で、資金を出しているのは実業家や政治家たち。我々ができるのはまず、彼らを獲物から遠ざけることである。例えば以前は、押収した木材を競売にかけていたために違法伐採業者の手に戻ってしまうことがあったが、今は押収した木材を教育省に渡し、学校の机やいすの材料として使ってもらっている。保護官を危険から守るには、現状では軍や警察に護衛を頼むしかない。森林保護のための関連法をさらに強化し、保護官らに十分な危険手当を払うことも必要である。