福島第一原発事故後、自然エネルギーの関心が高まり、「バイオマス」の注目も集まっている。岡山県真庭市は市全域の8割を山林で占めており、間伐材などの木質バイオマス産業の育成に取り組んでいる。官民が連携し、木質バイオマスを活用した「地産地消・循環型社会」の実現を目指しているのである。真庭市バイオマス政策課主任の小山隆さんによると、「市場で売れない細い木材や、製材所で余った端材や樹皮」である「使い道のない木材」のスギやヒノキの丸太などを「真庭バイオマス集積基地」に運び込んでいる。「月田総合集積基地」では、細かいチップにした買いとられた木材を燃料として使用したり、県内外の製紙会社に販売している。平成17年に、旧真庭郡勝山町や湯原町、川上村などの9町村が合併した真庭市は、山林面積約6万5千ヘクタール、人口約5万人で、3戸に1戸が土地を山間部に持つ。また、「美作桧」のブランドで知られ、木を切り出す会社は約10社、製材所は約30社ある。この地域の製材所では、原木仕入れ量のうち約4割の樹皮や端材の処分や、輸入木材が増加したことにより山林に残される木材が問題となっていた。真庭地域の製材所などの若手経営者でつくる「21世紀の真庭塾」は、その状況に注目した。地域の活性化を目指し、木材の廃棄物を活用して新産業を創出する「木質資源活用産業クラスター構想」を13年に策定したのである。その一方、18年に合併して発足した真庭市は「バイオマス利活用計画」を推し進めている。地元の真庭木材事業協同組合が真庭バイオマス集積基地を建設し、月田総合集積基地は真庭森林組合が基地建設している。同市庁舎は地元のヒノキ材を多く使用し、冷暖房の燃料として月田総合集積基地で生産されたチップを利用している。チップは市庁舎の他に市内の製材所などで燃料や発電に活用してい る。今後の目標は木材をエネルギーとしてだけでなく付加価値を付けて新産業を生み出すことである。木材から繊維を極限まで細くした新素材の「ナノファイバー」を作る技術開発に着手している。「事業性があり、業者側にメリットがあれば、木質バイオマスによる地域振興は続いていく」と市バイオマス政策課長の宅見幸一さんは期待している。