60年ぶりの大修理「平成の大遷宮」が出雲大社進んでいる。先月から作業の中心であるヒノキの皮64万枚を使った屋根の葺き替えが始まっている。国宝の本堂を守る屋根は、通常より長い皮や、漆をたっぷりと使い、ほかの寺社にない工夫が込められているのである。ヒノキの皮は岡山、兵庫、奈良、京都、岐阜から調達した。「檜皮葺き」は、7世紀後半から伝わる日本の伝統技法であり、ヒノキは油分が多く、繊維も強いため腐食に強い。とはいえ、風食ですり減るため多くの寺社では30年程度で葺き返る必要があるという。しかし出雲大社では約60年たっても、一切雨漏りを起こしていなかったという。これは通常長さ約75センチ、幅約15センチの檜皮を使うところ、出雲大社では最長約120センチのものを使っていたのである。檜皮は厚さ2ミリ程度。1センチずつずらして葺かれるため、120枚が重なることになる。重ねた檜皮の厚さは軒先で60センチ、平均20~30センチになるという。また工夫は下地材であり、一般の寺社では檜皮の下には、すのこ状の野地木舞だけだが、出雲大社はさらに三重の板屋根がある。一番上の「流し板」は雨水を流しやすいようにU字形の溝も施されている。その上、板の継ぎ目にはぜいたくな穴埋め材が使われている。穴埋め材は生漆に刻んだ麻などの食物繊維を混ぜた「刻苧」と呼ばれるもので、漆器や仏像の継ぎ目や割れ目を埋めるものである。1744年に施されたものが保たれているという。出雲大社の建築について詳しい鳥取環境大の浅川滋男教授は屋根の角度に注目し、平安貴族の寝殿造りの邸宅のように、通常檜皮葺きの屋根は五寸勾配(約27度)と緩やかなのに対して、大社造りの出雲大社本殿は「かね勾配」といわれる45度である。これは「高さを確保するとともに、水の流れが良くなり雨漏り対策にもなっている」という。また檜皮を止めるのは竹くぎは鉄くぎに比べ腐食しにくく、朽ちても周りの檜皮を劣化させることはない。現在は、兵庫県丹波市の石塚商店が全国で唯一生産している。4代目の石塚直幸さんは「檜皮がある限り、技術えを伝えていくのが使命であり、出雲大社でも60年間無事に持って欲しい」と話している。平成の大遷宮は約80億かけ、2013年春に完成予定である。