沖縄県の県花であるデイゴの花が咲かないという。ここ数年、沖縄県・八重山諸島や鹿児島県・奄美大島では花が咲かない状態が続いている。害虫が原因とみられるが、駆除剤が高額で、対策が遅れている。沖縄本島の南西約400キロ、石垣島の西に浮かぶ竹富島。桟橋から集落までの約800メートルにデイゴ63本が並ぶが、この春、花は咲かなかった。石垣島では、4月下旬、石垣市内の小学校の高さ約10メートル、直径1.2メートルのデイゴが突然根こそぎ倒れた。幹の中は空洞であった。他の小学校でも次々と枯れ、この2年間で10数本を伐採した。宮古島でも2000本以上の被害があり、現在、沖縄県が状況をまとめている。また奄美諸島にも被害は及んでいる。鹿児島県瀬戸内町の加計呂麻島では、樹齢350年近い巨木も連なる観光名所「諸鈍集落」の85本は今年、ひとつも咲かず、町は補正予算で150万円を計上、薬剤散布などをした。原因とみられるのがデイゴヒメバチ。体長1~1.6ミリで、2003年に台湾で大量発生し、翌年にヒメコバチの新種と発表された。以後、タイ、インド、中国、米国西海岸、ハワイなど世界中に生息地を広げている。国内では2005年に石垣市で初めて確認され、宮古島や沖縄本島から瞬く間に広がった。卵を産み付けた若葉や枝は「虫こぶ」という状態に丸まり、光合成ができなくなるため、成長が阻まれて衰えると考えられている。沖縄県森林資源研究センターの喜友名朝次・主任研究員は「海外でも大量発生しているが、生態がわからず、枯れさせるメカニズムも解明されていない」という。2008年、沖縄県森林資源研究センターは花が咲かない幹に特定の駆除剤を注入すると、ある程度再生することを突き止めたが、薬は60ccで約2000円。1本のデイゴで最低2万数千円かかり、大木なら4、5万円もするという。デイゴは、校庭、公園、民家、神事会場となる「御嶽」など、至る所に植えられている。石垣市文化財審議会委員長で、市の緑化を進めるNPO代表の前津氏は「御嶽には人の手を加えるべきでないと放置され、見るも無残な木も多い」と嘆く。そこでNPOで「デイゴ再生プロジェクト」を開始した。4月から市の委託で復活が見込まれる114本に薬を注入し、公共施設などの600本以上の被害も調べた。竹富島では、市民団体「竹富島のデイゴを救おう!実行委員会」が発足。210万円を借り入れ、約120本に薬剤を投与した。東京や大阪にも支援を呼びかけて募金活動を展開し、今月4月には島でチャリティー音楽祭も開催。