菅直人首相は所信表明演説の中で「再生を期待できる好機にある」と述べた。木材の国際的な需給変化がおきている、中国が日本を抜いて世界最大の丸太輸入国になり、一方で輸出国のロシアや東南アジアが資源保護に乗り出している。現在、木材チップは広葉樹なら国産の方が安く、やり方次第で外材に対抗できる可能性が出てきている。地球温暖化対策で、森林という豊かな国内資源をもっと生かせば、低炭素社会への転換という時代の要請にこたえる一歩にもなる。雨が多く、気候も温暖な日本は木の成長に適しており、森林の蓄積は40億立方メートルを超え、毎年8千万立方メートルずつ増えている。簡単な小規模作業道を増やして大型機械が使えるようにし、伐採・搬出コストを大幅に下げるという。かつての大規模林道などと違って、実態に即した振興策である。先の国会で、低層公共建築を木造とする努力を義務づける法律ができ、どんどん実施していってほしい。複雑すぎる流通を簡素化することや、産地表示の明確化も大切である。間伐に対する公的助成も拡大するべきであり、コスト割れが障害となって間伐が進まず、森が荒廃してしまうからである。政策を進める上で、国民の理解が欠かせず、薄暗く傷んだ森に入り、林業と環境の危機を知ってもらう機会が必要である。5月22日は、生物多様性の日であり、国連の呼びかけで世界各地で植樹が行われ、日本では市民ボランティアによる森の健康診断調査も行われた。これは手入れ不足の人工林を体感し、調べてもらおうというものである。外目には美しい森も、中へ入るとまるで違う。竹のように細いスギやヒノキがびっしり生え、日が差さず、薄暗い地面には下草もなく、生き物の気配もなく荒れた森である。これは外材に押され、戦後植えた木が放置されてきた結果で、全国1千万ヘクタールの人工林の多くがこんな状態になりつつある。