ドイツ北西部のオスナブリュックの森に、森の中で保育をする「折れた角」という幼稚園がある。幼稚園の3~6歳の14人の子どもたちは、森の中で思い思いに遊んでいる。この幼稚園の「コンセプトは自然の中で子どもたちが一緒に遊ぶことである。それを通して、森と人間も互いに頼りながら共生していることに気づいてほしい」と願っている。地元の親たちの「森の幼稚園がほしい」との思いから、1996年に運動を始め、市との話し合いを重ねて1999年、開園にこぎつけたのである。ドイツでもテレビゲームやインターネットなど子どもを取り巻く環境は変わってきている。森の幼稚園は1950年代にデンマークで生まれ、隣のドイツでは1993年に第一号が認可された。環境意識の高まりとともに、2009年には427園にまで増えた。日本でも2008年に、森の幼稚園の「全国ネットワーク」が旗揚げし、ネットワークの運営委員長で、1983年から長野市で「森の幼稚園」を続ける内田幸一さんは「政府は、幼児を環境教育の対象として見ないけれど、子どもの『その後』にどうつながっていくかをよく認識してほしい」と望む。汐見稔幸白梅学園大学長(教育人間学)は「環境意識の醸成に幼児期の体験はとても大事なのに、日本では学力や受験に目を奪われ、深いところから人間を育てようという意識が薄い。子どもに森を提供する人への税制優遇など、できる対策はいくらでもある」と話す。