毎年、大阪の中心を流れる大川から中之島までの河川敷全体には桜が咲き乱れ、多くの見物人でいっぱいになる。中でも、造幣局の桜の通り抜けは全国有数の桜の名所で、シーズン中には100万人近い人が訪れるという。安藤忠雄さんは、6年前から大阪のまちに桜を植樹して、大阪に少しでもかつての活力を取り戻そうとしている「桜の会・平成の通り抜け」という運動に呼びかけ人として参加している。この運動のねらいは、街の景観資源を生かした、市民参加型の新しいまちづくりを実現することであり、市民一人一人からの寄付金で成り立っている。当初は1口1万円という募金に賛同してくれるのか不安であったが、寄付を募ってみると5億2千万円もの寄付金が集まった。「桜で大阪を盛り返せるなら」と即座に答えてくれたのだろう。3月末で、桜の植樹は初めの目標であった3千本に到達する。桜を植えたから終わりではなく、ここに住む人々がまちを美しくすることを強く意識し、努力していくことが大切だ。水辺の風景も、桜の木の成長とともに年々変化し、世界に誇るべき都市の景観として育っていくだろう。