3月は教師にとって、いろいろと忙しい。窓の外をながめると、冬枯れの木々の中に、たった一本、莟(つぼみ)を白くかかげた木蓮が立っている。それを見ている と、暖かいものが滲み出し、「やっと今年が終わるな」という気持ちになる。木蓮の花は、年度が終わるころに咲く。教員にとっては、年度の終了を思わせる花なのである。 校庭に出て、木蓮の木に近づいてみると涙の形をした莟の先端に、わずかな切れ目が走り、その切れ目から春の光が内側に差し込んでいる。ぼんぼりのように見える。あと数日もすれば花は開き切るのだろう。開いた花は雨に打たれダラリと垂れ下がり、花びらも茶色に変色して、最後にはバラバラと地面にこぼれ落ちる…。木蓮が咲くのは、3月のごくわずかな時期だけなのである。