ブドウの果汁を搾り取った後の残りかすで、発電事業に取り組んでいる企業がある。取り組んでいるのは、「カヴィロ」というイタリアのワイン製造最大手企業だ。ワイン造りが盛んなヨーロッパでも、このブドウかすでバイオマス発電は、珍しいという。この企業は、イタリア国内の6州の農協36団体からなる合資会社で、それぞれの農協が収穫するブドウを一手に集め、ワインを量産している。その一方で、工業原料となるエタノールなども製造している。発電事業は1990年代半ばから取り組み始め、年間に8~10万トン出るブドウかすをエネルギー源として、自家発電を行ってきた。そこには、ワインの生産コストを抑える狙いがあった。現在、工場の熱電気センターでは、ブドウかすの焼却熱、つまりバイオガスを電力源とする「ゴミ発電」でタービンを動かしている。今では、電力会社への料金の支払いはない。今後は、発電設備を拡げることで余剰生産となった電力を新たな収益源にする計画で、エネルギー産業への本格参入を目指すそうだ。イタリアは小規模農園によるワイン生産が主流のため、このような発電は行われてこなかったが、自治体レベルでは注目されている。北部のピエモンテ州が発電事業を計画しており、州内産ブドウで年間約25億円の経済効果を見込んでいる。ブドウが新しいエネルギー源となる日が、将来やってくるだろう。