ナラやカシの「ナラ枯れ」被を食い止めようと、薪ストーブを使った社会実験が進められている。原因菌を媒介する害虫が増えた原因として里山の荒廃が指摘され、薪の切り出しや間伐材の利用を増やして森を再生させるというものである。ナラ枯れの研究拠点である森林総合研究所関西支所は2008年度から、家庭で薪ストーブを使ってもらい、使い勝手や光熱費の変化を調べる社会実験を続けている。林野庁の調べでは、昨年度の滋賀県内のナラ枯れ被害は15ヘクタール。しかし専門家は「実態はもっと深刻だ」とみている。専門家は被害拡大の原因として、薪などの燃料に使われてきた里山の広葉樹林が1950年代の燃料革命をきっかけに放置され、害虫の繁殖に適した太い老木が増えたことを指摘している。森林総合研究所関西支所では、京都府長岡京市で小学校などに薪ストーブを設置する社会実験にも取り組んでいる。担当する奥敬一・主任研究員は「薪ストーブの導入をきっかけに住民が里山に入り、木々を定期的に伐採するようになれば、森の回復につながる」と期待している。