大阪市西区新町のオフィス街にはコンクリートのビルが立ち並ぶ中に温かみを感じさせる木材の〝外壁〟のビルがある。実験の舞台の「大阪木材会館ビル」である。実験は、産官学でつくる「国産材を活用したヒートアイランド対策協議会」が推進している。6階建てのビル南側のタイル外壁約500平方メートルを、加熱水蒸気処理したスギのパ ネルで覆う計画で、現在3分の1が完成している。昨秋には、長さ約1.5メートルのサーモウッドで、川のコンクリート護岸約150メートルを覆う実験を、大阪市北区中之島で実施。覆われていない場所との比較で、温度が約3度下がる効果が表れた。今年6月5日に府立公衆衛生研究所(同市東成区)で行った外装被覆の予備実験でも、コンクリート壁より最大で5度温度が低いという結果を得ている。同協議会のワーキング部会長を務める吉田篤正・大阪府立大大学院工学研究科教授は、木材のヒートアイランド抑制効果を「木材はコンクリートに比べて熱容量が小さい。日中に入ってきた熱をため込まないし、夜間の放熱もない。だから、熱帯夜の抑制につながることが期待できる」と説明している。ヒートアイランド対策とともに、ビルのリニューアル時の外装材として、国産材の新たな市場開拓を図るねらいもある。実験では、材料の比熱、熱伝導率などの基礎データを測定するほか、壁面や屋上の被覆効果を検証。都市環境への影響評価をシミュレーションするヒートアイランド熱負荷削減量調査に加えて、CO2削減能力調査、製品デザインの検討も行う。結果は来年3月までにまとめられる予定である。