兵庫県と独立行政法人の防災科学技術研究所(茨城県つくば市)が木造校舎を耐震補強する新工法を開発した。多数の児童が犠牲になった中国・四川大地震を機に国内では小中学校の耐震診断が義務づけられた。しかし木造校舎の耐震化率は全国で1割に満たないのである。新工法が実用化されれば、これまでより短期に低コストで補強できる可能性が高まり、自治体には朗報である。校舎のような大規模木造建築物は補強技術が確立されていなかったため、兵庫県と防災科学技術研究所が壁や筋交いなどの部分ごとに耐震性を2年がかりで調べた結果、瓦の下の土を除去して屋根を軽量化したうえで、①筋交いの接合部を金具で補強②丈夫な構造用合板で壁面の耐力を確保③2階の床面を鉄製の筋交いで補強するだけで、耐震性を保てることがわかったという。この工法なら、基礎を鉄筋コンクリートにしたり、壁に鉄製の筋交いを入れたりした場合に比べ、外観を損なわずに工期を短縮し、低コスト化できるという。研究成果は来年度以降、県内での補強工事に活用し、国の指針づくりの基礎データとして報告することになっている。兵庫県防災計画室の村田昌彦室長は「現存する木造校舎は似た構造のものが多く、全国の木造校舎の保存に道筋がつく可能性がある」と話す。文部科学省によると、1981年の耐震基準の強化前に建てられた公立小中学校で、2009年度末までに耐震化された非木造の校舎は54.7%の4万83棟。一方、木造の381棟のうち耐震性が確認されたのは28棟(7.3%)にとどまっている。映画「火垂るの墓」のロケにも使われた1937年建造の兵庫県西脇市立西脇小学校の木造校舎は、現在耐震診断を受けている。西脇市教育委員会の担当者は「今回の耐震技術で保存できるなら活用を検討したい」と話す。県内には17棟の木造校舎があり、うち14棟で今年度内に耐震診断を終える予定だ。文部科学省施設助成課の担当者は「木造校舎は保存を望む声があっても費用や改修方法が壁になる。耐震技術が確立されれば活用につながる」と期待している。