地上を吹く風の勢いがこの数十年ジワジワと弱まっている。原因として地球温暖化に伴い大気の対流パターンが変わったこと、地上の樹木など植生の変化が影響しているとみられているが、はっきりした原因は不明である。このままのペースで風が弱まると、風力発電がやりにくくなると心配されている。フランスと英国の共同研究グループが、北半球約1万カ所の観測データのうち信頼性の高い約800カ所で、1979年から2008年までの30年間にわたる風速の変化を計算した結果、全体の73%の観測点で風速が遅くなっており、その大半で5~15%減少していたという。風の勢いが平均的に弱まるというより、強い風が吹く頻度が少なくなる傾向が見られるという。このことを17日発行の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(電子版)に発表した。これまでも中国や、オランダ、米国、オーストラリアなどでも風速の低下が報告されている。今回の研究はこうした事実を裏付けた。研究グループは風速が低下する傾向は60年代から始まっている可能性が高く、風が弱まった原因として、研究グループが有力視しているのが、植生の変化などによって地上の凹凸が増えたことの影響としている。植林した樹木が高木に育つと、風のエネルギーを吸収して風速が弱くなるという。実際、衛星観測によって植生の増加が確認された付近では、風速の低下が著しいという傾向が確認された。もう一つ想定されるのが気候変動との関係であり、温暖化によって気圧と温度の分布が変化することで、風の吹き方も変わり、一般には、温暖化は北極など高緯度の地域がより進むため、低緯度と高緯度地域の温度差は小さくなる。このため風の勢いも弱くなるという見方がある。研究グループは今回調べた北半球の風速低下に関しては、植生の変化の影響の方が、気候変動より大きいとみている。