大阪府八尾市のごみ焼却施設「大阪市環境局八尾工場」が管理する煙突にある地上約70メートルの保守点検用のテラスから今春、褐色と黒のまだら模様をした3羽のハヤブサが飛び立った。日本全域で繁殖していたが、1950~70年代に激減し、環境省は1998年、絶滅の危険が増しているとして「絶滅危惧Ⅱ類」に指定している。国内の個体数は700~1000羽と推定される。一方で「90年代から目撃が増え、復活の兆しがある」との指摘も出ている。府鳥獣保護員の小海途銀次郎さんは「泉大津市では6年前にホテルのベランダで初めて繁殖を確認した。これまでに4、5カ所の営巣地が見つかった」と話している。梅田の上空でも目撃情報があり、有数の大都市で鋭いくちばしの野性が舞っている。大阪市によると高さ60メートルを超える建造物は2008年度には約340棟あるという。これは上空から見れば、高層ビル群は断崖そのものである。万博記念公園では今春まで4年連続で幼鳥が巣立った。大阪南港野鳥園でも秋から冬にかけて観察できるという。絶滅を心配する声をよそに背景を解くキーワードの一つが都市緑化の進展である。オオタカの巣は直径約1メートルに及び、営巣には大木が不可欠なためである。大阪府内の市街化区域のうち樹木や樹林に覆われた面積は1974年度、約5.2%にとどまっていたが府は12年度に再び調査するが「ほぼ倍増しているとみられる」という。「人類の進歩と調和」を掲げた大阪万博の会場だった万博公園は開催40年後の現在、62ヘクタールの森林を含む生命を育む空間に生まれ変わった。国内初の人口干潟として誕生した野鳥園は四半世紀を経て高さ1.5~2メートルの植栽が約10メートルまで成長している。