タイから日本が大量に輸入している養殖エビは、マングローブ林を伐採して作った養殖池で飼育されたものである。1960年代初頭には約37万ヘクタールあったマングローブ林が、1996年には半分以下にまで減ってしまったという状況を受け、1998年から廃棄されたエビ養殖池にマングローブを植林しているのが「マングローブ植林大作戦連絡協議会」(会長・加藤茂成蹊大学理工学部教授)である。これは日本経団連の自然保護基金の支援を受けて実施している。タイ南部ナコンシタマラ地区にある廃棄された約4千ヘクタールのエビ養殖池で、毎年100ヘクタールの範囲に50万本の植林を実施。このプロジェクトは単に植林するだけではなく、マングローブ林の再生の過程を研究するという目的もある。加藤教授はマングローブに含まれる炭素や窒素を出発点に、それが他の動植物にどう流れていくかを追跡調査し、マングローブ生態系の食物連鎖の解明を進めている。「植林の実施による生態系の回復が、地元住民に恩恵をもたらすことを科学的に証明することで、地域の協力がえられる」と加藤教授はいう。