アサヒビールと鹿島は社有林から間伐などの森林整備を実施し、両社合わせて5年間で1万トンを超える二酸化炭素排出枠を得る事業をそれぞれ始める。政府が検討する企業の排出量に上限を定める排出量取引制度をにらみ、社有林を環境経営に生かすものである。これは2008年11月に創設された環境省の認証制度を活用する。森林保全による二酸化炭素吸収増加やバイオマス利用によるCO2排出削減を、排出枠に振り替えるのである。今年8月にアサヒビールは、広島県内の約720ヘクタールのスギやヒノキの森を社有林の間伐事業を制度の対象として登録した。ここで間伐を推進し、残った木を太く育てて二酸化炭素吸収量を増やし2008~2012年度の5年間の事業計画に対して、10月にも第三者認証を受け、累計約9200トンの排出枠を得るという。鹿島は今年7月までに事業登録し、宮崎県内の約80ヘクタールと福島県内の約40ヘクタールの社有林として、スギやヒノキなどの間伐を実施する。12年度までの5年間で累計約2400トンの排出枠を取得するという。自社の工事現場の二酸化炭素を相殺し、「CO2ゼロ」の施工とする用途に使う。このようなことは施工の発注側から環境配慮を求められるケースが増えており、受注獲得の際、アピールするためもある。また、国内林業の活性化により社会貢献にもなる。環境省の排出枠制度への登録は8月末時点で34件あるが、住友林業や王子製紙など木材に深くかかわる企業以外は各地の林業組合や自治体によるものが大半である。政府が6月に閣議決定した新成長戦略は林業再生を盛り込んでおり、追随する企業が増える可能性もある。