林業関係者への取材によって、昨年から中国の企業が、西日本を中心に全国各地の水源地を大規模に買収しようとする動きが活発化していることが分かった。三重県大台町産業室の担当者は、「木ではなく地下にたまっている水が目的ではないか」と分析している。それは、水源地の立ち木は、原生林を伐採した後に植林した二次林で、「よい木材」とは考えられず、土地も急斜面で伐採後の木材の運び出しに多額の費用がかかるからである。さらにこの水源地買収の背景には、中国での深刻な水不足がある。その中で、日本国内の水源地は現在、約30年前の価格まで暴落していることも中国にとって買い時と映ったようである。昨年6月に、「中国を中心とした外国資本が森林を買収してるのではないか」との情報が林野庁に寄せられ、全国の都道府県に実態把握のために聞き取り調査を行った。調査の結果、実際に売買契約が成立したケースはなかった。しかし、林野庁の森林整備部計画課の担当者は「現在の法制度では、万一、森林が売買されたとしても所有権の移転をすぐに把握する手段はない。森林の管理についても国が口を挟むことも難しい」と説明している。国連の予測によると、人口爆発と経済発展により、水不足の国で暮らす人は現在でも5億人に達し、2025年には約30億人に増加するとしている。中国をはじめとする水不足の危機は、一方でビジネスチャンス生み、「水メジャー」といわれる大企業が、世界で水源地を確保しようとする動きが目立っているのである。これに対し、日本国内では水源地を守る役割を果してきた林業が衰退の一途をたどり、外国資本が入り込むすきを与えているとの指摘がある。加えて、森林が国土の約7割を占めるにもかかわらず、法制度の不備もある。