国内最大規模、2000ヘクタールの照葉樹林が広がる宮崎県綾町。標高1100メートルを過ぎると落葉樹のブナ林が広がる。東南アジアから日本に到達した照葉樹林と、北からの温帯型落葉樹林が接している南端である。温暖化が進むとこの境界線が上昇し、森林総合研究所の試算では、ブナの生育に適した土地が21世紀末には約9割減る恐れがある。また、照葉樹林のシカによる食害も深刻で、吸収森林管理局の06年度調査によると、その食害率は2割を超えるという。周囲の森林伐採でシカが産地に追いやられたことや、雪が減りえさ不足によるシカの死亡率が低下したことが、その要因と指摘されている。同じく照葉樹林が分布する屋久島や東アジア地域をネットワークでつなぎ、日本人の生活、文化を育んできた森を、開発や温暖化などの新たな脅威から真美盛る挑戦が始まろうとしている。