台湾北部の新竹県にある尖石郷司馬庫新地区にはヒノキの巨木群があり、重要な観光資源となっている。先住民族であるタイヤル族が住む人口約200人の小さ いな集落である。村のあちこちには、住民によって作られた木彫りの像があちこちに飾られている。05年9月の台風により土砂崩れが起こった。直径60センチほどのケヤキなどがなぎ倒された。この集落のアミン・ヨショさんら3人は、集落の会議の決定を受け、道端のケヤキを持ち帰ろうとした。ケヤキは集落の公共財として標識などに利用する予定だった。しかし、法律では林務局(林野庁)の所有林から発生した倒木であったことから事件となる。台湾ではたとえ倒木であっても、林務局の所有物となる。森林窃盗罪で起訴されたアミンさんは、1審で懲役6ヶ月、執行猶予2年、罰金各16万台湾ドル(約43万円)を言い渡された。2審では一部減刑されたものの、有罪となった。各地でこのような事例が発生している為、林務局は一度特例を認めれば所有林の管理に影響がでるとしている。集落の指導者、イチェ・スルンさんは「元々、この森はタイヤル族の伝統的な領域だった。そこに『国有林』が設定され、木が次々に伐採されるのを見てきた」と語る。