京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授は新しい素材の開発を進めている。ナノファイバーという繊維は鋼鉄より5倍強い性質があり、樹木の細胞を作る繊維である。この繊維を取り出して固め、柔らかく透明なフィルムを開発し、ゆくゆくは次世代の携帯電話や自動車の素材にする研究に取り組んでいる。矢野さんは幼い頃から野山を駆け回るのが好きで、高校の倶楽部活動でも所属する生物倶楽部には顔をあまりださず近隣の山畑やリンゴ畑を散歩した。15年ほど前、新しい研究テーマが見つからず悩んでいたが、研究室の外で風にあおられながらも立つ木から、樹木は成長するたびに強くなる特性に気づいた。そして、樹木の特性を活かすとの発想から、今日の研究に繋がった。自分の身の回りに、常にアンテナを広げ続けることが大切と語る。